臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)のこと

かとうPT

こんにちは。群馬県高崎市の股関節専門リ・スマイル、代表の加藤将一です。今回は臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)についてお話しします。

臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)とは、成長する過程で骨盤のかぶり(屋根)が十分に発達せず、骨盤側のかぶり(屋根)が浅い特徴をもった骨格のことを言います。

病院でのレントゲン画像から診断されることがほとんどだと思います。

また、生まれつき先天性股関節脱臼であった場合もあります。

浅さの度合いは個人差があります。女性に多く、遺伝も関係しています。

臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)と股関節の痛み
かとうPT

臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)による股関節の痛みの原因は主に2つあります。

主な2つの原因

  1. 股関節唇の損傷
  2. 股関節周りの筋肉・筋膜・神経のトラブル

1.股関節唇の損傷

股関節唇とは関節内にあり、図1の赤マルの部位にあります。股関節のかぶりを360度覆っています。

主な役割は、股関節の密閉性を確保して股関節を安定させたり(Sealing)、股関節が簡単には抜けないように(Suction)しています。

(Sealing&Suction機能)

よく水道などでゴムパッキンが水漏れ防止や密閉性の維持などで使われていますが、アレと同じような感じです。

股関節と股関節唇の説明図
図1

臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)の方の場合、股関節唇が股関節のかぶりの浅さを補うために通常の股関節唇よりも大きく厚く成長する特徴があります。補うことは良いことなのですが、その反面デメリットもでてきます。

この図2は股関節の断面図です。

股関節唇の位置(水色)を見てください。

先ほどの役割を発揮するために、股関節が動く部分のキワに付いています。

股関節唇が大きく厚いと、股関節を深く曲げた時に骨盤と大腿骨の間で挟まってしまいます。

これが股関節唇を損傷する原因になります。

股関節唇には痛みを感じる神経があるので、挟まること、損傷することで痛みを感じます。

股関節と股関節唇の説明図
図2

2.股関節周りの筋肉・筋膜・神経のトラブル

臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)の場合、次のようなことが起こることがあります。

  • 股関節唇損傷による股関節不安定化
  • かぶりが浅いことによる股関節不安定化

上記が原因で、股関節周囲の筋肉・筋膜・神経に過度のストレスがかかります。

はじめのうちは股関節周囲のトラブルが目立ちますが、全身は繋がっているため(図3)次第に股関節不安定化によるストレスがカラダの他の部位にも拡がっていきます。

股関節以外にも痛みが拡がるのはそのためです。

全身の筋肉、筋膜、神経の説明図
図3

股関節唇の損傷にともなう股関節の不安定化は、先ほどの股関節唇の機能が低下することにより起こります。

Sealing&Suction機能が低下すると股関節が不安定化するため、股関節周囲の筋肉が安定させようと頑張ります。

頑張りが過ぎると次第に回復がおいつかなくなり、通常では睡眠や休息、入浴、軽くほぐすなどをすれば回復するはずの筋肉がリカバリーできないほどの硬さになってしまいます。するとそれに伴い、周囲の筋膜そして筋肉内を通過している神経などもトラブルを起こします。

これが股関節の痛みの原因です。

かぶりが浅いことによる股関節の不安定化も同様です。

頑張りすぎが原因の股関節の痛みなのです。いわゆるオーバーワークなのです。

『その股関節痛、切らずに治せます!』マキノ出版

『ツラい痛みがラクになる!女性の変形性股関節症』PHP

などの著者であり、変形性股関節症における保存療法の第一人者である矢野英雄医師もその著書の中で同様のことをおっしゃっています。

「痛み」という症状は、「疲労」の積み重ねによって起こるもの。その状態を「股関節疲労症候群」と呼ぶ。

股関節をかばう姿勢や動きを続けているうちに、肩や背中、腰、膝などに疲労が起こり、それが肩こりや腰痛、膝痛となって症状が全身に現れることもめずらしくない。

  • 『ツラい痛みがラクになる!女性の変形性股関節症』より引用
股関節の保存療法の権威である矢野英雄医師と共に撮影
とある日、矢野医師と共に
直美トレーナー

その痛み、一緒に乗り越えましょう♪

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コメント

コメント一覧 (3件)

  • 左股関節臼蓋形成不全です。完治せずとも、容態が軽くなって、痛みが無くなる事はありますか?

    • 餅原宏子さま

      はじめまして。コメントありがとうございます。
      また、こちらのブログ記事はまだ中途半端なままでゴメンなさい。
      近日中に完成させる予定です。

      ご質問の件ですが、餅原さまの状態を実際に診ていないので、軽はずみなことは言えませんが臼蓋形成不全の場合、股関節周囲の筋肉や神経が頑張りすぎていることがほとんどなので、その場合は筋肉や神経などをほぐしたり、また、全身の調整などを行うことによって痛みが軽くなったり、患者さまによっては痛みがなくなることがあります。

      餅原さんに知っておいてほしいことは、臼蓋形成不全と診断されるとよくあるのが筋トレをまずやってみようという話になりがちですが、筋トレよりもまずはトラブルを起こしている筋肉や神経をほぐすことの方が優先順位が高いことは知っておいてください。

  • 昨年12月に、二次性変形性股関節症にて右股関節に人工股関節置換術を実施しました。(先天性股関節脱臼にて10歳でOP・二次性股関節症にて臼蓋OPを33歳)今年、11月に左股関節の人工股関節置換術のOPを
    予定しています。現在、左股関節の疼痛が強く歩行時に杖を使用しています。OPまでの期間、筋膜マッサージなど施術を受けることで痛みが軽減するようならば、ぜひ受診をしてみたいと思っています。施術を施行後の痛み軽減は、もちろん個人差があると思いますが先生のご意見を伺いたいと思いコメントさせていただきました。ご回答よろしくお願い申し上げます。

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